証明写真

午前11時、私は家を出た。

 

4月中旬とはいえ、ここは北の大地。それなりに冷たい風をひたすら浴びながら近所のスーパーへ向かう。

 

週末のスーパーは人が多く、ゆっくり野菜を見ることも叶わなそうだ。野菜が新鮮で肉が臭くないけどそれなりに空いてるスーパーが近所に欲しい。そんなことを考えつつ、今いる入口の反対側、出口へと向かう。

 

私は今日、ここで買い物をしない。

 

 

 

レジ袋に買ったばかりの品を詰める人間達を横目に、スーパーの出口に辿り着いた。辺りを見回す。そこには無秩序なガシャポンが並んでいるのみで目当てのものが無い。ここにあると確かにそう聞いていたのに。

 

再び店内へ入る。別の場所へ移されたのかと様々な場所を見て回る。年配の夫婦と何度もすれ違う。無い。

 

外のスペースにあるかもしれない。そう見当をつけて再び出口へ。すると何故か、不自然に立てかけられた旗と白い機械の姿が目に入る。そこにあったのは私の探していた証明写真機だ。そうか、先程ここを眺めた時は旗に覆われていて証明写真機が見えなかったのか。良かった。ここのスーパーではない別の場所へ証明写真機を探しに行く羽目になるところだった。

 

筐体の中に入ってみる。想像通りのちっせぇプリクラだ!という感想を抱いた。そういえばこの写真を撮るための空間を覗いたことはあるものの、このように写真を撮るのは人生初めてだ。就活のやる気がある時はちゃんと人間に撮影して頂いてたのだが。

 

画面をちゃんと見てみると、液晶が遠い。私と液晶の間には透明な板があり、感覚的には10〜20cmほど向こうに液晶がある……という感じだろうか。目に優しくない。眼鏡持っていけばよかった。

 

ボタンは決定ボタンとキャンセルボタン、上下左右のボタンがあった。画面見ながらだとやりにくい位置だったのでタッチパネルにしてくれ。選ばれてない選択肢が水色になって、選んだ選択肢が白になるの、見づらい。UIが一昔前だな〜という感じ。私がゲームやる人間じゃなかったら写真サイズ等々全ての項目を選び間違えてたかもしれない。同じ写真撮る筐体でもプリクラって丁寧なつくりだったんだな。見直したよ、プリクラ。

 

画面に映し出された線に合うように、体の位置を調整する。私は低身長なので椅子をめちゃくちゃ高くした。回して高くするタイプの椅子だったのでグルグルでワロタwという気持ちになる。

 

シャッターを切る回数は2回まで。タイミングを見極めて撮った。写真映りがマシな方を頑張って決めた。目つきが怖くてせめて美肌オプションつけとけば良かったと後悔した。だが、これで行く!

 

なんかめっちゃ文句付けちゃったな。でも操作に迷わなかったらすぐ撮れるので良いですね。納得のいくまで撮りたい貴方は機械じゃなくて人間に撮って貰った方がいいと思います。当たり前だけれども。